野中経営グループ

文書作成日:2023/07/15
医師等の働き方改革に資する設備投資減税 2年延長

平成31年度税制改正で創設された、医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度が令和5年度税制改正で適用期限が2年延長されました。この制度は、医師等の働き方改革に資する設備投資減税として設けられたものです。制度の内容を改めて確認しましょう。

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医師等の働き方改革に資する設備投資減税
@ 制度創設の趣旨

 働き方改革が推し進められており、その中の一つ“時間外労働の上限規制”は、平成31年4月1日から施行されています。長時間労働の実態が問題視されている医師は、その適用が5年間猶予されているものの、医師をはじめとした医療従事者の労働時間短縮を促進させるための一定の設備投資について、平成31年度税制改正により減税措置(医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度)が設けられました。

A 制度の概要

 医療保険業を営む青色申告者(法人又は個人)が、平成31年4月1日から令和7年3月31日までの間に、医師等の労働時間短縮に資する一定の設備(以下、対象設備)を取得して医療保険業の用に供した場合には、当該設備に係る減価償却費として、普通償却費の他に取得価額の15%の特別償却費の計上が認められます。

【対象設備等】
類型設備等
類型1労働時間管理の省力化・充実に資する勤務時間短縮用設備等
  1. 勤怠管理を行うための設備等(ICカード、タイムカード、勤怠管理ソフトウエア等、客観的に医師の在院時間等の管理が行えるもの)
  2. 勤務シフト作成を行うための設備等(勤務シフト作成支援ソフト等、医療従事者の効率的な配置管理が行えるもの)
類型2医師の行う作業の省力化に資する勤務時間短縮用設備等
  1. 書類作成時間の削減のための設備等(AIによる音声認識ソフトウエア、それら周辺機器など、医師が記載(入力)する内容のテキスト文書入力が行えるもの)
  2. 救急医療に対応する設備等(画像診断装置(CT)など、救命救急センター等救急医療現場において短時間で正確な診断を行うためのもの)
  3. バイタルデータの把握のための設備等(ベッドサイドモニター、患者モニターなど、呼吸回数や血圧値、心電図等の病態の変化を数日間のトレンドで把握するためのもの)
類型3医師の診療行為を補助又は代行する勤務時間短縮用設備等
  1. 医師の診療を補助する設備等(手術支援ロボット手術ユニット、コンピュータ診断支援装置、画像診断装置等、在宅診療用小型診断装置など、医師の診療行為の一部を補助又は代行するもの)
類型4遠隔医療を可能とする勤務時間短縮用設備等
  1. 医師が遠隔で診断するために必要な設備等(遠隔診療システム、遠隔画像診断迅速病理検査システム、医療画像情報システム、見守り支援システムなど、医師が遠隔で診断することに資するもの)
類型5チーム医療の推進等に資する勤務時間短縮用設備等
  1. 医師以外の医療従事者の業務量の削減に資する設備等(院内搬送用ロボット、患者の離床センサーなど、医師以外の医療従事者の業務を補助するもの)
  2. 予診のための設備等(通信機能付きバイタルサイン測定機器やタブレット等を活用したシステムなどにより予診を行うもの)
  3. 医師の検査や処方の指示を電子的に管理するための設備等(電子カルテ、カルテ自動入力ソフトウエア、レセプトコンピューター、医療画像情報システム、画像診断部門情報システム、医療情報統合管理システム等診断情報と医師の指示を管理できるもの)
  4. 医療機器等の管理効率化のための機器・ソフト等(医療機器トレーサビリティ推進のためのUDIプログラム、画像診断装置等のリモートメンテナンス、電子カルテ、レセプトコンピューターのリモートメンテナンスなど)

 なお、上記類型で明示していない設備等は、勤務時間短縮用設備等の製造会社又は販売会社が、パンフレットや仕様書において医師等医療従事者の労働時間削減につながるような性能として、従来の製品より3%以上の効率化をうたっていることが要件となります。

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適用の際の留意点

 この減税措置を適用する場合の留意点は、次のとおりです。

@ 医療勤務環境改善支援センターの確認が必要

 「医師等勤務時間短縮計画」は、医療勤務環境改善支援センターの助言の下で作成することが必須です。この場合、最終的には同センターの確認を受けなければなりません。

A 申告の際には計画書の添付が必要

 「医師等勤務時間短縮計画」の写しを申告の際に添付しなければなりません。

B フォローアップの提出が必要

 計画書に基づき設備を導入して供用した場合には、半年後に医療勤務環境改善支援センターへ「医師等勤務時間短縮計画報告書」を提出します。

出典元:厚生労働省「医療提供体制の確保に資する設備の特別償却制度」PDF https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001103560.pdf
C 中古は対象外

 対象設備は“新品”の取得等に限られ、“中古”は対象外となります。

D 従来からの「医療用機器等の特別償却」との併用は不可

 対象設備の中には、取得価額の12%を特別償却費とすることができる従来からの「医療用機器等の特別償却」の対象となる設備もあります。
 この場合、併用して適用することはできません。いずれを適用するかは事業者側の選択となります。

 この設備投資減税は、直接的な勤怠管理システムだけでなく、医療機器に関しても一部対象となるものがあります。適用を受けるには手続きが煩雑ではあるものの、上手く利用しながら設備投資と勤務環境の改善に努めていきましょう。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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