今回は、採用面接で応募者に尋ねた質問の内容についてのご相談です。
新たに職員の募集をしています。複数人の採用面接をしたのですが、不採用とした1名から、「面接の中で尊敬する人を聞かれたのですが、不適切ではありませんか?」と指摘を受けました。他意はなく、身近な話題の一つとして尋ねたのですが、問題があるのでしょうか。
「尊敬する人」は、応募者本人の思想・信条に関わる内容であり、働く上での適性や能力には関係ないことです。質問への回答が、応募者の合否に関係なかったとしても、就職差別をされたとして問題になる可能性もあります。採用面接をする際には、尋ねるべきでないことを事前に押さえ、話題としないようにすることが求められます。
日本の法制度において解雇は、かなりハードルが高いといわれていますが、採用する職員の選定は、医院の裁量に委ねられています。そのため、採用の段階では、適性検査や能力を確認するための筆記試験をしたり、数回の面接を実施したりすることもあります。
厚生労働省は、このような採用選考の過程において、基本的人権を尊重し、適性・能力に基づいた公正な採用選考を行うよう強く求めています。公正な採用選考とは、応募者に広く門戸を開き、適性・能力に基づいた採用基準により、採否を判断することです。
応募者の適性・能力とは関係のない事項について質問等をすることは、それを採用基準としていない場合でも、把握したことで結果として合否に影響を与え、就職差別につながるとの指摘を受けることがあります。
公正な採用選考を意識していたとしても、特に面接では、緊張している応募者を和ませるといった目的から、応募者の身近な話題について触れることもありますが、その際には以下のような内容を避ける必要があります。
@応募者本人に責任のない事項
- 本籍・出生地に関すること
- 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
- 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
A本来自由であるべき事項(思想・信条に関わること)
- 宗教に関すること
- 支持政党に関すること
- 尊敬する人物に関すること
- 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
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