野中経営グループ

文書作成日:2021/04/20


 定期借家契約を利用してアパートの入居契約を行う場合の留意点を教えてください。




 空室が目立つ賃貸アパートを相続しました。修繕等の諸問題はありますが、しばらくは売却せず賃貸経営を続けていく予定です。入居時に行う賃貸借契約の種類のひとつに「定期借家契約」があると見聞きしました。この「定期借家契約」を利用する場合の留意点を教えてください。




 貸主に有利とされる「定期借家契約」ですが、メリットもあればデメリットもあります。これらをよく理解した上で、アパートの将来性に見合った契約を選択されるとよいでしょう。



1.賃貸借契約の種類

 賃貸借契約には、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があります。

(1)普通借家契約

 普通借家契約とは、契約期間満了時に更新できる契約です。借主を保護するために、貸主は正当事由がない限り、契約の更新を拒絶できないとされています。
 アパート入居時に締結する住居系の賃貸借契約は、普通借家契約で行われるのが一般的です。

(2)定期借家契約

 定期借家契約とは、契約期間の満了によって賃貸借関係が確定的に終了する借家契約をいいます。普通借家契約のような更新の制約はないことから、貸主は正当事由がなくても、借主に退去してもらうことが可能です。
 このように期間満了で必ず契約が終了するため、定期借家契約の期間延長をする場合、当事者双方の合意による再契約が必要となります。

2.定期借家契約を締結するには

 定期借家契約を締結するには、次の要件を満たさなければなりません。

  • @契約期間を確定的に定めること
  • A公正証書等による書面によって契約すること
  • B貸主が借主に対して、契約の更新はなく期間の満了とともに契約が終了することを、あらかじめ書面(契約書ではないもの)を交付して説明すること

 また、契約は期間の満了により終了しますが、期間が1年以上の場合は、借主に対して、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間(通知期間)に契約が終了する旨を通知しなければなりません。ただし、通知期間後に契約終了の旨を通知すれば、通知後6ヶ月を経過した後は契約を終了することができます。

3.貸主の立場からみた定期借家契約のメリット

 貸主の立場からみた定期借家契約の主なメリットとして、次の3つが挙げられます。

(1)立退料が不要

 立退料は、普通借家契約において、貸主の都合で賃貸借契約を解除したい場合に生じる金銭をいいます。このような借主へお金を支払う不合理なルールを貸主に課すことで、借主の権利を守る契約とされています。一方、定期借家契約は、立退料が不要であることから、貸主に有利な契約と位置付けられています。

(2)1年未満の契約が可能

 定期借家契約では、賃貸借契約の期間を1年未満とすることができます。よって、1ヶ月や6ヶ月といった短期の賃貸借期間を定めることができるため、マンスリーアパート等の契約に利用することが可能となります。一方、普通借家契約で契約期間を1年未満とした場合は、「期間の定めのない契約」となります。

(3)賃料減額請求権の排除が可能

 定期借家契約では、特約によって借主からの賃料減額請求権を排除できます。一方、普通借家契約では、貸主借主合意のもとで、借主からの賃料減額請求権を排除する内容の特約を設けても、無効となります。

4.貸主の立場からみた定期借家契約のデメリット

 貸主の立場からみた定期借家契約の主なデメリットとして、次の3つが挙げられます。

(1)賃料が安くなる

 普通借家契約に比べて借主に不利な定期借家契約では、世間一般の賃料での契約は難しいのが実情です。立地や契約期間等にも左右されますが、定期借家契約の賃料相場は普通借家契約の50〜80%程度といわれています。

(2)契約締結時と終了時の手続きが煩雑

 定期借家契約は上記2.の要件を満たす必要があるため、業務上の手続きが煩雑になります。また、これらの要件を満たさない場合は、普通借家契約になります。

(3)貸主からの中途解約は不可

 定期借家契約では、借主との合意解約の場合を除き、貸主からの中途解約はできないため、契約時には注意する必要があります。

 今回のケースでは、将来の収入を予測した上で、修繕費等の支出に対する回収見込期間やアパートの賃貸寿命等を考慮し、今後の賃貸経営期間を想定する必要があります。

 仮に数年後、建替えや売却を視野に入れるのであれば、将来の収入予測を考慮した上で、定期借家契約での入居募集を検討されてもよいでしょう。

 なお、中立的な立場として不動産専門コンサルタントに相談するという手もあります。一人で悩まれているようでしたら、お気軽に当事務所へご相談ください。


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