野中経営グループ

文書作成日:2018/06/05


 受取人が指定されている生命保険金は、相続財産とは別個に請求・取得することができますので、当座の資金確保に有効です。




 先日、友人のお父様が亡くなり、その友人から「父が保険に加入していたので、葬儀費用や病院へ支払うお金を保険金から支払うことができて、とても助かった。」という話を聞きました。
 私の父は、生命保険には一つも加入していないそうですが、万が一の際にすぐに使えるお金を確保するために生命保険は有効なのでしょうか?




 相続人が自己資金以外で必要な資金を確保したい場合に、請求手続きから1週間程度で資金を受け取ることができる生命保険は、有効だと考えます。




 一般的に相続が発生すると、被相続人の銀行等の金融機関の口座はすぐに凍結されてしまいます。凍結解除をするには、被相続人や相続人全員の戸籍などを準備する必要もあり(注1)、自由にお金を引き出せるようになるまでには、時間がかかることがあります。

●預貯金等を引き出すまでの一般的な流れ

  •  銀行等の金融機関が相続が発生したことを知ると、すぐに被相続人の口座は凍結されます。
  •  遺言がない場合は、相続人全員で話し合い、誰が何を相続するか決定します(遺産分割協議)。相続人全員の合意がないと遺産分割協議は成立しないため、揉めたりするケースですと、協議が長引くこともあります。
  •  遺産分割協議がまとまると合意事項に従って、金融機関で相続手続きを行います。
  •  被相続人の口座を解約して、相続する人の指定口座に送金するのが一般的です。

  • ◆民法(相続関係)等の改正/仮払い制度等の創設・要件明確化
  •  これまで遺産分割前の預貯金について、原則、払戻しが認められていませんでしたが、相続発生後、緊急にお金が必要になった場合でも一切払戻しができないと、当面の生活費や葬儀費用の支払い等、相続人にとって困った状況になることも想定されます。
     そこで、今回、約40年ぶりの民法(相続関係)の改正で、預貯金について遺産分割前でも家庭裁判所の判断を経ないでも、相続人が単独で一部払戻しを受けることを認める制度について検討されています。

  •  民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(平成30年3月13日国会提出)

  • 遺産の分割前における預貯金債権の行使
  • 第九百九条の二
  •  各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
 一方、生命保険は「みなし相続財産」として相続税の課税対象となりますが、本来の相続財産ではなく、受取人固有の財産であるため、相続発生後、受取人から保険会社に請求すれば、すみやかに保険金を受け取ることができます。


●生命保険の請求の流れ
  •  生命保険は、原則、遺産分割協議の対象外となるため、受取人単独での請求が可能です。
  •  保険会社に必要な書類を提出し、不備がなければ、通常、5〜10営業日以内に受取人の口座に保険金が振り込まれます。(注2)
 このように生命保険は、葬儀費用や病院に支払う費用、残された方の当面の生活資金などとして活用することができます。また、相続税がかかる場合、納税資金に充てることもできます。
 相続発生後、すぐに使えるお金や納税資金を確保しておくために、生命保険を活用するのもよいでしょう。



  • (注1) 平成29年5月29日から「法定相続情報証明制度」が開始され、法務局(登記所)において手続きを行い、認証付きの法定相続情報一覧図の写しの交付を受けてこれを各機関に提出すればよく、手続きを要する機関ごとに関係者全員の戸籍を直接提示する必要はなくなりました。
  • (注2) 生命保険は約款で保険金の支払期限が定められており、約款の規定は契約ごとに異なるので個別に確認が必要です。なお、提出書類は死亡診断書や受取人個人の証明書類のみでよく、上述の法定相続情報一覧図など他の相続人に関する書類は必要ありません。


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